インターナルコミュニケーションとは?目的と意義
追記:2020.08.31
目次[非表示]
- 1.インターナルコミュニケーションの定義
- 2.インターナルコミュニケーションの重要性
- 2.1.企業と働き手の関係性の変化
- 2.2.働き方の多様化
- 2.3.価値観の多様化
- 2.4.消費者の判断基準
- 3.従来のインターナルコミュニケーションの問題点
- 3.1.1.一方通行になっている
- 3.2.2.伝わっているか
- 3.3.3.塊としての「社員」で良いのか
- 4.2020年以降のインターナルコミュニケーション
インターナルコミュニケーションという言葉をご存じでしょうか。
インナーコミュニケーションともいわれるこの言葉、まだ聞きなじみの薄い言葉でもあります。
一方で、雑誌「宣伝会議」編集部が2020のマーケティング注目ワードとしてとりあげられている、「重要ワード7つ」にもピックアップされている言葉です。
今まさに押さえておくべきキーワードといえます。
インターナルコミュニケーションの定義
では「インターナルコミュニケーション」とはなんでしょうか。
マーケティング、PR、広報、人事、経営などさまざまな分野のプロフェッショナルが集い、ビジネスにおけるコミュニケーションの考察を行う国際団体の米国IABCでは、次のように定義されています。
Internal communication “is the process of exchanging information and creating understanding and behaviors within an organization that reinforce the organization’s vision, values and culture among employees, who can then communicate the company’s message to external audiences”
(Tamara Gillis, “The Human Element” 2008, p.26)
訳:インターナルコミュニケーションとは、「組織内で情報交換し、理解と行動を生み出すプロセスであり、組織のビジョン・価値観・文化を従業員間で強化しながら、従業員は会社としてのメッセージを外部へ伝えること」
従来、日本では、「社内コミュニケーション」として広報・PR部門が行う、社内に向けての情報共有活動として捉えられていましたが、 最近では、もう一歩踏み込んだ、IABC定義の内容に則した施策が求められています。
では、なぜこのインターナルコミュニケーションが今注目されているのでしょうか。
インターナルコミュニケーションの重要性
インターナルコミュニケーションに注目が集まった理由を整理してみました。
企業と働き手の関係性の変化
2019年、トヨタ自動車の豊田社長や、経団連中西会長が「終身雇用の限界」を言及し、社員と経営は一体という考え方が崩壊しつつあります。
従来では社員一丸となって、業績アップや業界No.1を目指していましたが、近年では、新しく多様な価値観が生まれ、経営と社員という単純構図ではなくなってきました。
働き手としても、早期離職やキャリアチェンジが珍しくなくなり、人材の流動化が一層進んでいます。
経営が「言わなくてもわかるだろう」というスタンスでは企業のメッセージ・理念は伝わらなくなってしまったのです。
そこで、しっかりと情報交換のためのコミュニケーション施策に力を入れる必要性が出てきたといえます。
働き方の多様化
働き方改革やIoTが進み、同じ空間で社員同士が長時間顔を合わせて仕事をしなければならないということではなくなりました。
リモートワーク、フレックスタイム制の導入、時短勤務、の増加や非正規雇用の採用等、一つの会社の中でさまざまな立場の社員が働くことが一般的になってきています。
社内掲示板や朝礼での通達といった情報共有が難しくなった今、同じ場所・同じ時間帯に立ち会えない社員同士をしっかりと結びつける必要が出てきています。
インターナルブランディングを重視することは従業員エンゲージメントを高めることとも言えるのです。
価値観の多様化
もはや滅私奉公の時代は終わり、ワークライフバランスを重視する世代が増えてきました。
いまや社員は「自分はなぜこの仕事に就くのか」を問い、「なぜこの会社なのか」「なぜこの商品なのか」を問い、社会の役に立つことが働くことの一つの価値基準となっています。
会社のために!では響かない時代だからこそ、企業・組織としての理念(ミッション・ビジョン・バリュー)、カルチャーをしっかり伝えるという行程が必要になり、また、多様化する社員一人一人の価値観に呼応するメッセージを届ける必要が出てきました。
(関連記事:「ミッション ビジョン バリューとは。築くために必要なこと」)
消費者の判断基準
新しくモノを作れば売れる時代は終わり、あらゆる商品・サービスのコモディティ化が進んでいます。
機能価値による差別化が難しくなった中で、消費者の心を動かすためには企業の「ブランド」で差別化する必要が出てきました。
企業というのは、経営者やその会社の商品・サービスだけでは成り立ちません。
消費者は企業の魅力を、実際に体験する製品・サービス、広報、営業活動を通じて感じ取ります。
それらの活動は社員一人一人の日々の業務の上に成り立っているといえます。
いかに社員に企業のメッセージに共感してもらい、かつ体現してもらうか。ここがブランド力を向上するポイントになります。
同時に、 ブランディングする上でも、社員がいかに企業のメッセージに共感しているかが重要になってきています。
従来のインターナルコミュニケーションの問題点
今までもインターナルコミュニケーション(社内コミュニケーション)は存在していました。
それらの多くは、企業が発信する情報を知らせること・周知すること、に重点が置かれていました。
故に伝えるための手段(ツール)が注目され、社内報のデジタル化・動画化やアプリ化、イベント・勉強会の設定等 ツールの改善や手法に着目する傾向が強くありました。
しかし、これでは「今」求められているインターナルコミュニケーションに適しているとは言いがたい点があります。
その問題点はどこでしょうか。
1.一方通行になっている
いわゆる「広報」的な考え方が強いと、一方通行になりがちです。
発信に注力しているだけでは、読まれない・直ぐに忘れ去られてしまう時代です。
世の中は圧倒的な量の情報に溢れていますから、
業務に追われている社員はなおのこと優先度の低い情報として見落としがちです。
社員が「知りたい」と思う、自ら情報を取りに来るに値する価値を持つ情報に落としこんで行かない限り、双方向のコミュニケーションとはいえなくなってしまうのです。
2.伝わっているか
重要なことは社員一人ひとりの意識を変え、行動に変革が出る状況になることです。
伝えた事実ではありません。
いくら熱心に頻繁に発信しても、社員に腹落ちしていなければ、施策としては意味をなしません。
何を知りたいのか、どのようにしたらイメージしやすいのか、これは立場や考え方によってポイントが異なってきます。
それらをきちんと理解して伝えていく工夫が必要になりますが、十把一絡げの発信では伝わりきらないことも出てきます。
3.塊としての「社員」で良いのか
社内広報となると社員をターゲット(標的)ととらえた情報発信ということになりますが、「社員」と一括りで捉えて、効率的にリーチするための手法選びになりがちです。
しかしこれからは、社員一人ひとり人として対話する関係づくりが求められてきています。
2020年以降のインターナルコミュニケーション
御社商品・サービスのファンは顧客・取引先だけではありません。
社員が最初のファンといえます。
ファンに対して適切なコミュニケーションを取れているか、想いを伝えられているか。
この考えに基づくと、インターナルコミュニケーションの対象は社員のみならずアルバイト・従業員の家族、学生、取引先と広がっていきます。
そこではもはやCM/広告などのエクスターナルコミュニケーションとの境界も曖昧になってきています。あらゆるステークホルダーとの関係を適切に結びつける、コミュニケーション能力そのものの向上が必要になっていくるといえます。