人を巻き込むのが上手いリーダーがやっていること
リーダーシップといって思い浮かぶ行動はどんなものでしょうか。
的確な指示、背中で語る、チーム全体への目配り…。
いずれもリーダーシップを取るために必要ですが、引っ張る・手本になると同時に必要な要素があります。
それが「人を巻き込み、動かす」ことです。
目次[非表示]
- 1.チームはメンバーの能力で決まるのか
- 2.人を動かすのがうまい人とは
- 3.巻き込む力とは融合する力
- 4.相手の内側に入る具体的方法
- 4.1.心理的安全性とは
- 4.2.自分を知り相手を知る
- 5.ビジネスの場における自己開示と他者理解
チームはメンバーの能力で決まるのか
興味深い調査があります。
あなたがリーダーとなって結果を出せるチームを作るときに、どちらのチーム作りを選択しますか。
A 個人の能力が極めて高い人だけを集めてチームをつくる
B 個人の能力が極めて高い人と、その下のレベルの能力の人を集めてチームをつくる
多くの人がAの選択をすることがチームのパフォーマンスが高まると思うのではないでしょうか。
しかし、サッカーのナショナルチームを調査した組織心理学の研究では驚くべき結果が出ました。
ある割合までは、トップタレントが増えるほど、チームのパフォーマンスが高くなっていきますが、それを過ぎて、トップタレントの選手が多くなりすぎるとチームのパフォーマンスが下がることがわかったのです。
この研究では続きがあり、アメリカのプロバスケットボールチームについても同様の傾向があることがわかりました。
Saab, R.I., Schaefer, M., Anicich, E.M,. Ronan, R., & Galinsky, A.D.(2014). The too-much-talent effect: Team interdependence determines when more talent is too much or not enough. psychological Science.25(8), 1581-1591.
お山の大将ばかり集めても、連携できる関係性がなければチームの力は上がらないということが示唆されています。個々の能力と同じくらい、「メンバー同士がどのような関係にあるか」は重要であり、どのような関係性に導くかがリーダーの重要な役割であると考えられるのです。
人を動かすのがうまい人とは
プレイヤーとして、一人で立ち回ることで成果を出せば良いのとは違い、リーダーにはチームを牽引する役割があります。1人で達成できる仕事の量や成果には限界があり、だからこそ組織体として企業は存在し、複数人の力を活用することこそがリーダーがすべき役割の一つといえます。
人を動かすのが上手い人とは、自分だけでは大きな成果が出せないと知っている人。
そして、人を巻き込みチーム力で大きな成果を出すというイメージを明確に持っている人、といえるでしょう。
巻き込む力とは融合する力
人を巻き込むにはどのようにしたら良いのでしょうか。
対峙したりはねつけたりしていては反発が起きるばかりで、巻き込むことはできません。
巻き込むために重要なのは、自分のベクトルと相手のベクトルを「和合」させ、課題に対して同じ視点にたちながら解決策と最善の成果を探り出していくことです。がっぷり四つに組んでしまうと膠着状態を引き起こし、お互いの力を相殺してしまうのですが、相手の内側に入り込み相手の力を活かす方法であれば、相乗の効果が見込めます。
お互いが相手の内側に入る、これがいわゆる心理的安全性といえます。
相手の内側に入る具体的方法
心理的安全性とは
心理的安全性のあるチームとは、一言でいうと「メンバー同士が健全に意見を戦わせ、生産的で良い仕事をすることに力を注げるチーム・職場のこと」です。
意見が対立を生むために発生するのではなく、よりよくするために出せているか、
目立とうと足を引っ張り合うのではなく、メンバーを輝かせるために状況に応じて役割を果たせているか。
お互いを認め合って信頼しているからこその行動が自然とでるかどうかが重要です。
- 「無知」だと思われたくない→質問できず、相談しない空気
- 「無能」だと思われたくない→ミスを隠したり、自分の意見を言えない空気
- 「邪魔」だと思われたくない→周りに助けを求められない空気
- 「否定的」だと思われたくない→議論を避け、率直な意見が出ない
このような恐れを抱えたままではメンバーを信頼しての行動は出てこないでしょう。
逆に、心理的安全性が確立されたチームでは、相談や意見、議論が活発に行われ、相互に助け合いながら成長できるチームになるのです。
自分を知り相手を知る
心理的安全性が重要なことはわかりますが、具体的に何をすればチームに心理的安全性がもたらされるのでしょうか。
最も簡単なのが、あなたは誰に心理的安全性を感じるかをイメージすることです。
家族、古い付き合いのある友人、長年苦楽をともにしている同僚…。
共通しているのは、
・自分のことを知ってもらえていると感じている
・相手のこともわかっていると思っている
・気をゆるしていること
自分のことも知ってもらえていて、相手を知っているから気を許せる関係といえるでしょう。
自己開示というのはどうしても時間がかかってしまいがちです。
相手に自身をさらけ出すのはどうしてもためらってしまいますが、長い付き合いによって打ち解けていくと、相手を理解していくと同時に自分を理解してもらえるコミュニケーションを取っていきます。
その中で必然的に信頼関係が構築されていくのです。相手の内側に入るとは、相手を知っているだけでなく、自分のことも理解してもらうコミュニケーションの積み重ねといえます。
ビジネスの場における自己開示と他者理解
コミュニケーションの積み重ねこそが相手の内側に入り、心理的安全性を構築するためのポイントと書きましたが、ビジネスの場において時間のかかる積み重ねというのは現実的ではありません。
スピードが求められる現在では、集められたチームはすぐに成果を求められてしまうものだからです。
だからこそ、明確な目標値やそれにいたる達成度合いの把握などさまざまなノウハウが検討されていますが、土台に信頼関係がないと途端に数値に追われギスギスとした空気があふれる職場になってしまうジレンマを抱えてしまいがちです。
自分自身=個性というのは、主観的なもので測ることや可視化するということは難しいとされてきました。
だからこそ時間をかけたコミュニケーションが必要だと考えられていましたが、近年では個性(パーソナリティー)分野の研究が進んできています。
分析を通して、他者と自分とが違う要素があるということをまず認めること。
どんな特性や良さを持っているのかをお互い開示し合うこと。
個性分析は、今まで時間を必要としていた相互理解のショートカットの一つの手段となります。
コミュニケーションという形のないものに対して、誰もが迷いや悩みを抱えてる時代ですが、
個性という形のないものの可視化を通してコミュニケーションは深められます。
是非お試しになってみてはいかがでしょうか。