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生産性が劇的に向上する!従業員“動機付け”マネジメント戦略

はじめに|いま、従業員の「やる気」が組織を変える

「最近、社員の意欲が感じられない」「部下の目標達成意識が低い」――
こうした悩みを抱える中小企業の経営者・人事担当者は少なくありません。人手不足や採用難が深刻化する中で、限られた要員で業務成果を最大化するには、一人ひとりの“内側から湧き出るやる気”、すなわち「動機付け」がカギを握ります。

本記事では、今必要とされる動機付けマネジメントに焦点を当て、生産性向上を実現するための実践的アプローチを解説します。

目次[非表示]

  1. 1.はじめに|いま、従業員の「やる気」が組織を変える
  2. 2.第1章|そもそも「従業員の動機付け」とは?
    1. 2.1.内発的動機と外発的動機の違い
  3. 3.第2章|なぜ従業員の意欲は低下するのか?
    1. 3.1.① 目標設定が曖昧
    2. 3.2.② 評価制度に納得感がない
    3. 3.3.③ 上司との信頼関係が築けていない
    4. 3.4.④ 成長実感がない業務内容
  4. 4.第3章|従業員の行動と意欲を引き出す「動機付け設計」とは
    1. 4.1.マズロー欲求階層理論に基づくモチベーション管理手法
    2. 4.2.マズロー欲求階層理論の5段階
    3. 4.3.職場環境におけるモチベーション管理への応用
      1. 4.3.1.低次欲求への対応(第1〜2段階)
      2. 4.3.2.中次欲求への対応(第3段階)
      3. 4.3.3.高次欲求への対応(第4〜5段階)
    4. 4.4.モチベーション管理における戦略的アプローチ
  5. 5.第4章|個性分析で「やる気スイッチ」を可視化する
    1. 5.1.性格特性を把握して、最適な対応を
  6. 6.第5章|中小企業でもできる「動機付け」の仕組み化ステップ
    1. 6.1.今日からできる4ステップ
  7. 7.おわりに|“やる気”を引き出す企業が生き残る

第1章|そもそも「従業員の動機付け」とは?

動機付けとは、ある行動を起こすきっかけとなる「内的な欲求や外的な刺激」のことです。これが高まることで、従業員は自発的に行動し、業務に主体性を持って取り組むようになります。

内発的動機と外発的動機の違い

  • 外発的動機:給与、賞与、昇進、賞賛といった外部から与えられる報酬
  • 内発的動機:自己成長、やりがい、人間関係、使命感など、内面からの欲求

もちろん、報酬や待遇といった外発的要因も重要です。しかし、長期的に社員の意欲を維持し、組織全体の活力へとつなげるには、「その人が何にやりがいを感じるか」を見極めたマネジメントが必要です。

第2章|なぜ従業員の意欲は低下するのか?

中小企業では、特に以下のような要因で従業員の意欲や行動力が低下することが多く見られます。

① 目標設定が曖昧

「今月の売上を伸ばそう」「業務の効率化を図ろう」といった抽象的な指示だけでは、部下の行動は具体化しません。目標が曖昧だと、行動に結びつかず、達成感も得られにくくなります。

② 評価制度に納得感がない

成果を出しても評価されない、逆に評価の基準が不透明。このような状況では、社員は「何を頑張ればよいのか」がわからず、意欲を失ってしまいます。

③ 上司との信頼関係が築けていない

人間関係は動機付けにおける大きな要因です。特に直属の上司との関係性が悪化していると、報連相が滞り、孤立感を抱くようになります。

④ 成長実感がない業務内容

ルーチンワークの繰り返しや、成長に繋がる機会の欠如は、自己肯定感の低下を招きます。「この仕事に意味があるのか?」と感じた瞬間、社員の心は離れていくのです。

第3章|従業員の行動と意欲を引き出す「動機付け設計」とは

では、どのようにすれば社員のやる気を引き出し、業務への行動を促すことができるのでしょうか?ここでは心理学の理論を踏まえつつ、具体的な方法を紹介します。

マズロー欲求階層理論に基づくモチベーション管理手法

従業員のモチベーション向上を図る上で、その根本にある「動機付け」のメカニズムを理解することが重要です。人間の行動原理を考察する際、心理学者アブラハム・マズローが提唱した「欲求階層理論」は、現代の人事管理においても有効な理論的枠組みを提供します。
この理論では、人間の欲求は以下の5つの階層に分類され、低次の欲求が満たされることで、より高次の欲求へと向かうとされています。

マズロー欲求階層理論の5段階

マズロー欲求階層理論

1. 生理的欲求
生命維持に必要な基本的な欲求(食事、睡眠、休息など)
2. 安全欲求
身体的・経済的な安全と安定を求める欲求
3. 社会的欲求(所属・愛情欲求)
集団への帰属意識や他者との良好な関係性を求める欲求
4. 尊厳欲求(承認欲求)
他者からの評価・承認・尊重を求める欲求
5. 自己実現欲求
自己の潜在能力を最大限に発揮し、理想的な自己像を実現したいという欲求

職場環境におけるモチベーション管理への応用

この理論を人事管理に応用すると、各段階の欲求に対応する施策を体系的に整理できます。

低次欲求への対応(第1〜2段階)

生理的欲求への対応
適正な給与水準の確保により、従業員の基本的な生活基盤を保障
安全欲求への対応
充実した福利厚生制度、社会保険制度の整備により、経済的安定と将来への安心感を提供

中次欲求への対応(第3段階)

社会的欲求への対応
良好な職場環境の構築、チームビルディング活動、社内コミュニケーション機会の創出により、組織への帰属意識と良好な人間関係の形成を促進

高次欲求への対応(第4〜5段階)

尊厳欲求への対応
適切な評価制度の運用、裁量権の付与、昇進機会の提供、上司からの適切な承認とフィードバックにより、従業員の存在価値と貢献を認知
自己実現欲求への対応
企業の社会的使命や価値観の共有、個人の能力・才能を活かせる業務機会の提供により、従業員が自己の可能性を最大限に発揮できる環境を整備

モチベーション管理における戦略的アプローチ

効果的なモチベーション管理を実現するためには、まず対象となる従業員がどの欲求段階にあるかを適切に把握することが重要です。
第1〜3段階の欲求については、制度設計や環境整備など、組織による外的なアプローチで比較的対応が可能です。特に、基本的な処遇や職場環境が整備されていない状況では、まずこれらの基盤整備が優先されます。

一方、第4〜5段階の高次欲求については、企業のビジョン・ミッション・価値観といった根本的な要素が深く関わるため、より戦略的で継続的な取り組みが必要となります。しかし、従業員がこれらの高次欲求を認識し、それに向けて行動することができれば、内発的で持続可能なモチベーションの向上が期待できます。

第4章|個性分析で「やる気スイッチ」を可視化する

人にはそれぞれ「動機づけられるポイント」が異なります。これを可視化するのが、個性分析ツールの大きな価値です。

性格特性を把握して、最適な対応を

  • Aさん:達成志向が強く、「評価と成長機会」で意欲が高まる
  • Bさん:協調性が高く、「人間関係の安心感」で仕事の質が上がる
  • Cさん:好奇心が旺盛で、「自由度の高い業務」が原動力となる
    個性分析を導入することで、上司は部下一人ひとりの特性に応じたアプローチが可能になります。結果として、信頼関係が構築され、組織の心理的安全性も高まります。

第5章|中小企業でもできる「動機付け」の仕組み化ステップ

動機付けを“属人的なスキル”から“再現可能な仕組み”にすることで、誰でも一定の成果を上げられるようになります。

今日からできる4ステップ

  1. 「目標=行動+意味」で再設計する
        →定量目標に加え、「なぜそれを目指すのか」を明示
  2. 定期的な1on1で“内面”に触れる時間を確保
        →成果だけでなく、感情・人間関係への満足度も確認
  3. 個性を活かす業務のアサインを意識
        →分析ツールやアンケートを通じて適性を把握
  4. 行動変化を承認・フィードバックする文化の定着
        →「やってくれてありがとう」「助かったよ」の一言で、行動は変わる

どの一言で、どんな目標設定で、どんな評価でやる気や動機付けが強化されるのかをひとり一人見極めるのは非常に時間がかかることです。経験や勘を研ぎ澄ませている間に従業員が辞めたり、生産性が下がっていくのを待っている時間はありません。

だからこそ、その社員との関係性や社員の個性見極めを科学的分析ツールで理解していくことが、生産性向上へのショートカットといえるのです。

おわりに|“やる気”を引き出す企業が生き残る

企業の成長とは、突き詰めれば「社員一人ひとりの行動の集合体」です。
だからこそ、画一的な制度や報酬だけではなく、「個を理解し、行動を支援するマネジメント」が求められます。
従業員の“動機付け”を科学し、再現可能な仕組みとすること――
それが中小企業における最大の生産性向上戦略であり、組織の未来を切り拓く第一歩となるのです。

石川リエ
石川リエ
組織分析研究所所長 ロジック・ブレイン認定パートナー ロジック・ブレイントレーニングパートナー 今まで30を越えるチームの分析を行い、その結果と今後の施策案をご提案。

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